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首輪を利用した訓練について

公開日: : 最終更新日:2018/06/04 トレーニング方法について, 体罰について

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先日、仕事で東京都内に行く機会がありました。

快晴に恵まれたとても気持ちの良い日で、私は住宅街を通る緑道を歩いていました。

そこには、緑道を散策する親子やジョギングに励む人、ワンちゃんとお散歩する人たちの姿も多く見られました。

そんなのどかな雰囲気の中、前方からジャーマンシェパードを連れた4,50代のご夫婦と見られる方たちが歩いてきました。

そのシェパードを連れている方たちとは、まだ30mほどの距離があったにもかかわらず、その光景に何とも言えない違和感を感じました。

その違和感は、近づくとともに具体的なものになり、とくにリードを持つ男性の左手に異様な緊張感を感じたのです。

すれ違う際に横目でそのシェパードを見ると、毛でおおわれたその首にプロングカラーが付けられているのが見えました。

 

「あ、なるほど、、」

 

 

 

プロングカラーとは、昔ドッグトレーニングの世界で使われていた訓練器具です。

このような物です。↓

ちょっと分かりにくいですが、首輪の内側に突起がついており、首輪が閉まるとその突起が首に食い込むという仕組みです。

訓練士がリードを引いた時、より強い刺激をワンちゃんの首に与えるために作られたものです。

付けるとこんな感じです。

拷問器具みたいですよね。

力加減を誤り、ワンちゃんの首に穴が開いたという例もあります。

現在では、このプロングカラーを使用しているドッグトレーナーはもうほとんどいません。

“ほとんど”いないです。ということは、まだ少数ながらいるという事です。

 

このような類の首輪を使って訓練する方法は、チョークやジャークと呼ばれます。

ワンちゃんが好ましくない行動をした時に、リードを強く引きます。

そうするとワンちゃんの首に衝撃がはしり、その不快感から、ワンちゃんはその行動をしなくなるという原理です。

 

最初のうちは、ワンちゃんの行動を減少させるくらいに、強くリードを引かなければいけません。

しかしトレーニングが進むと、リードを強く引く必要はなくなり、チョンチョンといった合図程度の刺激で、ワンちゃんの行動を制止することができるようになります。

 

冒頭で紹介したジャーマンシェパードは、飼い主にとって好ましくない行動をするのでしょう。

もしかしたらグイグイと前へ引っ張るコなのかもしれません。もしかしたら通行人に飛び掛かるのかもしれません。

そのシェパードを連れた男性は、いつでもリードを強く引けるように構えながら歩いている状態だったのですね。

それが私が感じた異様な緊張感の正体だったのでしょう。

 

 

 

私はこのチョークという訓練方法を提案しませんしおこなう事もありません。

その理由はとてもシンプルです。

他に方法があるから、です。

 

もう少し具体的な理由をあげると、以下のようなことがあります。

●ワンちゃんに対して強い嫌悪刺激を使用する事。

●またその嫌悪刺激に対するワンちゃんの副反応。

●ワンちゃんの首への身体的な負担。

●ワンちゃんに対する飼い主の振る舞いが暴力的にエスカレートする危険性。

これらの理由から、私は飼い主さんにこの方法を提案することはありません。

 

特にワンちゃんの身体的な負担は命にかかわります。

もともと首に何かしらの疾患を抱えているワンちゃんにとって、リードを強く引いて首を絞めるという方法は命に関わります。

病気のワンちゃんには、チョークしない?

ドッグトレーナーが、気管虚脱や頸椎椎間板ヘルニア、環椎軸椎不安定症といった、頸部の疾患を診断できるのでしょうか。

症状がまだ出ていない状態でも分かるのでしょうか。

ドッグトレーナーがそのような診断をすることはできません。

また多くの場合、初めましてでいきなりガツンとリードを引きます。

とても危険なことです。

 

このような訓練方法が紹介される時、必ず添えられる謳い文句は「この方法は即効性がある」です。

たしかにその通りだと思います。

ではなぜ即効性があるのでしょうか。

それは痛みや恐怖から動物が逃れようとすることは、生きるために最も優先される自然な反応だからです。

トレーニングでそれを利用したら、ワンちゃんは不快から逃れるために、その状況の中で生き延びるために、必死で行動をしようとするでしょう。彼らが即効的に行動を変えようとするのは当然です。

 

でも考えてもらいたいのです。

人間から、飼い主から、命の危険を感じるようなことをされているということを。

ワンちゃんは、自分の身を守るために攻撃的になるでしょう。

飼い主のことを警戒して逃げるようにもなるでしょう。

飼い主を通して人間というものを怖がるようになるかもしれません。

そうなると飼い主以外の人にも攻撃的になるかもしれませんね。

 

これらは、動物が嫌悪刺激に対して示すいたって自然な反応です。

体罰によって即効的に変わったその行動は、必ずしも人間の望むかたちになるとはかぎらないということです。

それらの行動に対して、さらに体罰を加えますか?

問題がどんどん複雑になっていくことは容易に想像できますね。

 

体罰をとことん繰り返し、どんなに抵抗してもかなわないとワンちゃんが悟る頃には、そのワンちゃんの心はどうなっているでしょう。

まさに「心が壊れる」という状態になっているのではないかと思います。

 

私は、

逃げることもできず戦っても勝てない状況で体罰を繰り返され、動くことさえできなくなったワンちゃんを見てきました。

体罰を繰り返されることで、心を閉ざし、顔から表情が消えたワンちゃんも見てきました。

 

もしもそのような方法しかないのであれば、

犬という動物が人間と一緒に暮らすためには、激しい体罰を受けなければいけないというのなら、

人間は犬を飼うべきではありません。

彼らは人間と一緒にいるべき動物ではありません。

 

ドッグトレーニングには様々な方法があります。

体罰以外の方法もたくさんあります。

まずはそちらをおこなうべきではないでしょうか。

 

 

 

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